テレビデザインの基礎知識 20
シンク入れ
(アドレス書き・ブラックストライプ作業)

 シンク入れとは簡単に言うと、業務用テープにシンク(同期信号)とタイムコードの情報を記録していく作業のことをいいます。新品のテープ(バージンテープ)には最初何も記録されていません。そこにタイムコードを書き込むことによってインサート編集が可能になります。
 シンク入れはフロッピーディスクの初期化に近い作業といえます。フォーマットの種類をきちんと理解し、自分の納品先にあった初期化の作業が必要です。
 DVに関しては、事前にテープにシンク入れをすることはあまりしません(DVCAMやDVCPROなどの業務用テープではシンク入れをする場合があります) 基本的にDVテープに収録する際は、細かくインサート編集するのではなく カラーバーも含めて一気に収録します。

※シンク入れのことを「アドレス書き」「ブラックストライプ作業」と呼ぶ人もいます。
※シンク入れにはテープの尺の長さと同じだけ時間を必要とします。プロダクションではシンク入れの作業は新人が行うことが多いので、この苦痛な作業を「真苦入れ」と呼ぶ人もいます。(悲)

Betacam SP テープ

Betacam SP デッキ
PVW-2800

 シンク入れの注意点

シンク入れをする際にはいくつか注意点があります。

<ドロップフレーム・ノンドロップフレーム>
通常、番組用のテープには「DF ドロップフレーム」で
CM・VP・CGなどのテープは「NDF ノンドロップフレーム」でシンク入れします。

<開始タイムコード>
通常番組(テレビ局ほか)  → 01:00:00:00 開始
【例外】日本テレビ・NHK  → 10:00:00:00 開始
報道関係(テレビ局ほか)  → 00:00:00:00 開始
【参考】ドラマ収録などはテープロール番号を時間に割り当てます。
例)ロケテープの3本目 03:00:00:00 開始
タイムコードの設定時刻(開始点)は本編開始タイムの1分前〜2分前が通例です。
( TV-Design21:テープ収録 を参考にしてください)

これらは、さまざまな納品形態が存在するので納品先に確認してください。

 シンク入れの手順

ここではBetacamSPテープにシンク入れする手順を解説します。
DigitalBetacam等の他のテープの場合でも基本的な手順は同じです。


シグナルジェネレータ
Tektronix TG700型

シグナルジェネレータ
LEADER LT 443D
<B.B(ブラックバースト信号)の準備>

ブラックバースト信号とはカラーテレビ信号の黒の映像信号のことをさします。当然この信号にもシンク(同期信号)が含まれています。画面は真っ黒ですが、必要な信号が含まれているので、デッキに何も接続しない場合とは大きく違うので注意してください。
 デッキに入力する信号は、専用のシグナルジェネレータから発生させた信号が良いのですが、ノンリニア編集機に用意されているブラックの信号でも構いません。

<デッキ側の設定>

デッキのパネルを開き、TC GENERATORの設定を
「INT」「PRESET」「REC RUN」にします。
ドロップフレームかノンドロップかの設定をします。
納品先にあわせ「NDF」もしくは「DF」を選択。

<音声入力をゼロにする>

シンク入れの際には音声は入力しないので、
ツマミを引きだして、音声入力レベルをゼロに絞ります。

<開始タイムコードの設定>

開始タイムコードを入力します。
1.「HOLD」ボタンを押して入力状態にします。
2.「ジョグダイヤル」を使用してタイムコードを入力。
3.「SET」で決定。

※機種によって若干、入力方法に違いがあります。

<録画(シンク入れ)>

「REC&PLAY」ボタンを押して録画を開始します。
タイムコードと同時にB.B信号が記録されていきます。
テープエンドまで録画するのがマナーとされていますが、収録する内容に応じてシンク入れの長さは調節してください。

※複数のテープにシンク入れをする際は、キッチンタイマーなどを置いてテープチェンジすると効率が良いです。

<テープの「風通し作業」について>

「風通し作業」とは、購入してきた新品テープを「テープエンドまで早送り」して、巻き戻しする作業のことを言います。(通常、巻き戻しは自動的に行われます。)
 業務用テープはデリケートなのでテープにテンションがかかるとトラッキングのトラブルが起こる場合があります。また この作業をおこなったほうがドロップアウトが減るという人もいます。
 「おまじない」みたいなものだと思って、新品テープにはこの作業をおこなうことをオススメします。

※ドロップアウトとは…
ビデオテープ上のキズやゴミにより, 信号が脱落して再生画面にあらわれるノイズのことを言います。

<シグナルジェネレータ>
日本テクトロニクス 株式会社:http://www.tektronix.co.jp/
リーダー電子 株式会社:http://www.leader.co.jp/