テレビデザインの基礎知識 12
カラーバーの役割
(SMPTEカラーバーによるNTSCモニタ調整)

 カラーバーとは、簡単にいうと「テレビ用の色見本帳」のようなものです。DTPの世界でもカラーマネジメント(色合わせ)が行われるように、テレビ放送の世界でもカラーマネジメントは非常に重要な要素です。チャンネルごとに画面の明るさや人の肌の色が違っていたり 赤いりんごがオレンジ色だったりしたら、見る人が迷惑してしまいます。 そのため各放送局はこのカラーバーという「色見本帳」を基準に 信号の色や明るさを合わせて放送しています。 また、放送用の素材を制作する段階でも色合わせを可能にするために 基準信号としてカラーバーを本編素材といっしょに納品します。
 DTPでのカラーマネジメントと同じように「入力・制作・出力」のすべての段階できちんと同じ基準で調整されていないとまったく意味がなくなってしまうので注意してください。
カラーマネジメントを怠ったところで致命的なミスにはなりませんが、自分の制作した画面が思わぬ色で放送されてしまうのを防ぐためにもデザイナーとしてきちんとした管理方法を理解したいものです。

※ 数年前はテレビ放送終了後の時間帯にはカラーバー画面をよく見かけたものですが
 最近は一般的にはあまり目にする機会がななくなってしまいましたね…

加法混色
<カラーバーのしくみ>

印刷などの反射面では減法混色という方法で色を表現し、
テレビ等の発光体では加法混色という方法で色を表現しています。
(光の三原色であるRGBを使用してあらゆる色を表現可能)
カラーバーはそのRGBを混ぜ合わせてできる7色を使用して
放送機器の調整を可能にしています。
またカラーバーには種類がいくつか存在し、
分野や用途によって使い分けられています。

SMPTEカラーバー
<SMPTEカラーバー>

日本の放送局やプロダクションで最も使用されているカラーバー
シンプルなフルフィールドカラーバーに比べて、
さまざまな調整機能が追加されています。
これを使用して業務用NTSCモニタの調整を行います。

 SMPTEカラーバーを使用したNTSCモニタの調整
Photoshop・AfterEffects等でテレビ用の画面デザインをする際には
パソコンモニタで作業すると同時に、業務用NTSCモニタで確認することをオススメします。
これはパソコンモニタ上の色調とNTSCの色調が異なることが多いからです。
(DTP・印刷の分野でも色校正という作業をするのと同じです)
NTSCモニタで正確に確認するためにも、モニタの調整作業は重要だと思います。
準備するもの
・業務用NTSCモニタ(BlueOnlyボタンのついているもの)
 …SONY PVMシリーズを非常によくみかけます。
  正確な確認にはこのクラスのモニタが必須
・SMPTEカラーバー(75%・0% IRE-Setup)
 …ハードウエアから発生するものが望ましいのですが、
  ノンリニア編集機等の場合はメーカーから提供されている
  ファイルを必ず使用してください
 (カラーバーは簡単に作成できるものではありません
  決してマネして自作しないように!)
・カラーバーの入手先をこのページの最後に掲載しました。

SONY PVM-14M4J

クロマ・フェーズの調整

 1. SMPTEカラーバーをモニタに入力
 2. モニターの「BlueOnly」スイッチをオン
 3. クロマボリュームで右図のように調整
 4. フェーズボリュームで右図のように調整
 ※クロマとフェーズの調整は交互に影響しあうため、
  明るさが均一になるまで、3〜4.を繰り返します。
 ※BlueOnlyのボタンのないモニタでは調整できません。

ブライトネスの調整

 1. モニタの「BlueOnly」をオフにしてカラー表示に戻す
 2. ブライトネスボリュームで右図のように調整
  (暗い方からまわしていくと良い)
 ※周囲の環境に影響されるので環境光に注意
 ※画面全体をみて不自然のないように調整

コントラストの調整

 <グレースケール信号を入力できる場合>
 1. グレースケール信号を入力
 2. 白の部分の階調が正しく見えるように調整
  (白つぶれを起こさない最大限度にする)
 <グレースケール信号がない場合>
 1. カラーバーの左下の白部分を使用
 2. 白の部分がきれいに見えるように調整
  (膨らんだ感じにならないように)
 ※周囲の環境に影響されるので環境光に注意
 ※画面全体をみて不自然のないように調整。

以上の調整を何度か繰り返して全体を良い状態に近づけていきます。またモニタは電源を入れてから安定するまでに時間がかかるものも存在するので、こまめに調整することをオススメします。

民生用・家庭用テレビの調整(BlueOnlyのスイッチがない場合)は 基本的に「見た目」でおこなうしか有効な手段がありません。そのため、基準となる調整された業務用NTSCモニタが1つあると重宝します。
家庭用テレビの大半は「鮮やかでくっきりとした映像」が特徴なので(そのほうが、メリハリがあって綺麗に見えやすい…)その特徴を念頭に入れてデザイン作業を進める必要があります。業務用と家庭用のどちらのモニタでみても不自然のない映像を制作することが大切です。

EchoFire」というプラグイン(Mac版のみ)を使用すると
FirewireからDV出力で「SMPTEカラーバー」や
「各種テストパターン」を出力することが可能です。
DV環境で作業をしている方には絶対オススメです。
<EchoFire 2.0>
http://www.synthetic-ap.com/products/echofire/index.html
http://www.flashbackj.com/

カラーバー&テストパターンの入手先(Mac版のみ)
<Test Pattern Maker 1.0> フリーウエア
http://www.synthetic-ap.com/products/tpm/index.html